地方公務員にもエリート部署というものはあります。
「エリート部署ってどこなの?」
そんな疑問にお答えするために、県庁に約10年間勤めた僕が思う“行政職におけるエリート部署”を紹介します。
エリート部署はこの5つ
早速結論から。
僕の考えるエリート部署は次の5つの部署です!
- 財政課
- 人事課
- 企画・政策部門
- 花形事業の所管部署
- 市町村課(都道府県の場合)
それでは一つずつ説明していきましょう!
財政課
エリート部署といえば真っ先に挙がるのが財政課でしょう。
「どうせそうだろうと思ったよ!」というのがこれをお読みの大多数の感想だと思います。すみません。
主に予算査定を行う部署ですので、予算(つまりお金)を握っており、それゆえ庁内でもかなりの権限を持っています。
政策や議会に関する情報も沢山集まってきますし、財政課で得た知識・経験はその後のキャリアにとても役に立ちます。
そのため、財政課経験者が出世するケースはとても多く、県庁で言うところの副知事や部長クラスまで出世している人も結構います。
ちなみに、財政課と出世の関係についてはこちらの記事で詳しく述べているので興味のある方はどうぞ。
財政課で働く職員の印象ですが、見た目から“The エリート”というよりも、真面目で努力を惜しまないタイプの方が多い印象です。
財政課は繁忙期にはとてつもない業務量になりますし、かなりの体力勝負です。
それでいて、ミスをした場合の影響が大きい仕事ばかりです。
というのも、財政課の仕事は首長や幹部、議会にまで行き渡る仕事が多いですからね。
だから、仕事が大量にあっても手を抜かず一つ一つ間違いのないように処理していくことのできる努力型の人が多いのでしょう。
人事課
人事課も財政課と並ぶエリート部署です。
副知事(副市長)や部長クラスまで出世している人の半数は、人事課もしくは財政課そのどちらかを経験しているのではないかと僕は思っています。
人事課はその名のとおり人事を取りしきる部署です。
人事異動だけでなく、機構改革(役所内の組織の改編)もありますし、職員の給与体系に関する業務もあります。
財政課がお金を握っているとするならば、人事課は人を握っているというところでしょう。
人を握っているわけですから、当然、庁内での権限もかなりのものです。
加えて、入ってくる情報量も段違いですから、庁内での立場は財政課に匹敵するほどのものです。
業務量でいっても財政課と同じくかなり業務量が多い部署です。
特に人事担当は夏から翌春までずっと繁忙期といってもいいくらいでしょう。
では人事担当以外は忙しくないのでしょうか?
いえ、そんなことはありません。
機構改革がある場合にはそれを所掌する係はとてつもなく忙しいですし、給与改定があれば給与担当も忙しくなります。
ところでこれは完全に持論ですが
人事課の職員は若干エリート意識が高いように思います。
庁内での立場は財政課と人事課が飛びぬけていますが、財政課は先ほど言ったとおり泥臭くてあまりエリート感が出ていない印象を持ってしまいます。だからそう感じるのかもしれません。
まあ自治体によってはエリート意識まる出しの財政課職員もいますけどね!笑
企画・政策部門
いわゆる、企画課や総合政策課といった部署です。
その自治体の総合的な政策を担っている部署で、おそらく自治体の総合計画を所管していることでしょう。
自治体として、どういう政策に力を入れ、どういう方向に進むのかを全庁的な視点で考える部署ですので、当然重要な部署です。エリート部署と言っていいでしょう。
しかしながら、今の時代どこの自治体も厳しい財政運営をしていますので、企画・政策といっても財政の縛りを受けるのが実情です。
そのため、実質的には財政課よりも立場が低いことが多いですし、目立つような成果を上げるのが案外難しいという側面もあります。
自治体全体の企画・政策を考える総合政策課や企画課とは少し異なりますが、各部局の総括部門、具体的には○○総務課や○○政策課(○○は部局名)といった部署も企画・政策部門と言えます。
総合政策課や企画課ほどではありませんが、こちらも優秀な職員が配属される部署ですので、比較的エリートな部署と言えます。
花形事業の所管部署
その自治体における花形事業を所管している部署もエリート部署です。
観光振興に力を入れている自治体であれば観光に関する主力事業を所管している部署、農産物に力を入れている自治体なら主力の農産物に関係する事業を所管している部署といった感じです。
財政課や人事課はバリバリの総務系、企画・政策部門もどちらかというと総務系ですが、花形事業の所管部署は事業系の部署です。
なので、エリート部署の中では一番やりがいを感じることができる部署ではないでしょうか。
そのため、異動先として希望する職員はかなり多く、希望してその部署に異動するのは至難の業です。
市町村課(都道府県の場合)
都道府県であれば、市町村課もエリート部署であることが多いです。
市町村課とは、市町村の行政・財政・税政運営の助言や市町村の起債、市町村合併といった業務を所管する部署です。
事業を行っている各部署でも所管事業に関して市町村に対する助言や連絡を行うことはありますが、市町村課は市町村の基幹部分に関する助言や連絡を行います。また、住民基本台帳や選挙といった業務も市町村課が所管しているところがほとんどです。
市町村課では、市町村の行政・財政・税政運営の助言を行っているので、行政や財政、税制といった行政職の公務員にとって重要な知識を必要とします。そのため、優秀な職員が配置される傾向にあります。
しかしながら、市町村課は確かにエリート部署ではありますが、庁内での立場という点ではそれほど高くはありません。
というのも、対市町村においては強大な権限を有していますが、庁内の部署に対しては特に権限を持っていないからです。
そのため、エリート部署でありながら庁内ではあまり目立つことはない部署です。
補足
エリート部署は基本的にどこも忙しい
役所において評価されやすい部署は例外なく忙しい部署です。
当然、上で挙げたエリート部署はいずれも多忙な部署ということになります。
なので、エリート部署でバリバリ働くということはある程度の忙しさを覚悟しなければなりません。
特に財政課はとても忙しいうえ、精神的な負担も大きい部署です。
“忙しければエリート”というわけではない
役所において評価されやすい部署は例外なく忙しい部署だと言いました。
しかしながら、その逆は成り立ちません。すなわち、“忙しければエリート”というわけではないということです。
詳しいことは下の記事で触れていますが、周囲に仕事のできない人が多いと、自分にどんどん仕事がまわってきてしまい、かなり忙しくなってしまいます。
エリート部署であろうとなかろうと職場の状況次第でいくらでも忙しくなるのです。
しかし、残念ながらそのような状況でいくら忙しく働いても、それほど出世には影響しません。
とても優秀な人が、あまり目立たない職場(=エリートではない部署)で無双しているようなものです。当然、部署内では大変重宝され、評価されるでしょう。しかしながら、それは非常に範囲の狭い評価である場合があります。
その部署の上司がその後すごく出世すれば、その上司のおかげで庁内の評価も上がるかもしれません。しかし、そのような状況に陥らせている上司が超出世するとは思えないので、あまり期待はできないでしょう。
“忙しければエリート”というわけではない、ということは必ず覚えておきましょう。
エリート部署でも担当によってはエリートではないこともある
これも皆さんに勘違いしてほしくないことです。
エリート部署でも主要な業務を担当しなければ、実際はエリート部署とは言えません。
財政課であれば予算査定や予算の総括、地方債の担当は間違いなくエリートでしょう。しかし、そこで庶務的な業務をやっているだけではエリートとは言えません。
同じような例を挙げると、人事課であれば、人事や組織の担当はエリートと言っても違和感ないですが、給与に関する担当だと正直それほどエリートという感じがしません。
といっても、自治体にはよりますが大体一つの課に5年くらいはいますので、初めは庶務担当でも1~2年して予算査定の担当に配置替えなんてことも普通にあり得ます。そうなるともう庶務だからとかは関係ないですけどね。
まとめ
本記事のまとめになりますが、地方公務員におけるエリート部署は以下のとおりです。
- 財政課
- 人事課
- 企画・政策部門
- 花形事業の所管部署
- 市町村課(都道府県の場合)
こららの部署を経験することで大きく成長でき、役所内でも一目置かれる存在になります。
そして、それらの部署で得た知識・経験を活かして、その後の異動先でもきっと成果を出すことができるでしょう。
そうやって結果的には出世につながっていくことになります。
これがエリート部署と言われる所以ではないでしょうか。