事務系の地方公務員がスキルアップするためには自発的にキャリアパスを考える必要がある
と僕は考えています。
この点についてはこちらの記事で理由を含め解説しました。
>> 【公務員のスキルアップ】必要なのはキャリアパスをしっかり考えること
しかし、自発的にキャリアパスを考える必要があることは理解したものの
「キャリアパスってどう考えたらいいの?」
このような疑問を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、「キャリアパスをどう考えたらよいか」という点について僕なりにお話をしたいと思います。
本記事では、民間企業でキャリアパスを嫌というほど考えさせられた僕AKASHIが、事務系(行政職)の地方公務員向けに、自身の県庁での経験を踏まえつつ「キャリアパスの正しい考え方」について解説していきます。
考え方の概要(全体像)
全体像を理解してもらうためにまず概要を説明します。以下のとおりです。
キャリアパスの考え方
概要(全体像)で示した各項目について、それぞれ詳しく説明していきます。
①勤務先のことを知る
「勤務先のことを知る」これは準備として必須の作業です。
キャリアパスは自分の意志や思いだけで描くことはできません。
自分が業務を行うことがあるであろう職場、つまり自身の勤務先についても詳しく理解しておく必要があります。
重要なのは以下の2点です。
勤務先にどういう部署・仕事があるのかを理解する
勤務先にどういう部署があるのか、そしてどういう仕事があるのかを理解しなければ話になりません。
役所内に部署や所掌業務をまとめた文書があれば、それを見るなどして理解しましょう。
勤務する自治体のホームページや採用パンフレット、総合計画なんかも参考になります。
気になる部署や仕事はツテを頼るなどして関係者から直接話を聴くことができればベストです!
勤務先における平均的な昇進の年齢を知る
自信が務める自治体の平均的な昇進の年齢を知ることが大事です。
例えば、大体40歳で係長になっているとか、50歳で課長になっているといったことです。
年齢で昇進することが多い公務員にとってはこれを知っておくことがキャリアパスを描く際に必要になります。
特に管理職(中間管理職含む)になる平均的な年齢は押さえておくべきです。
なぜなら管理職になる前となった後では同じ部署・係でも業務内容がガラッと変わるからです。
あなたがやりたい仕事は係長になってしまったら直接担当できない可能性は十分にあります。当然ですが、逆に係長にならないとできないこともあるかもしれません。
やりたい事業・業務でも、そのときの自身のポジション次第では直接的にやりたいことができない可能性も十分にあります。
このようにキャリアパスを考えていく上で役職というのは重要なファクターです。
②自己分析をする
続いては自己分析です。
自己分析なんて面接試験の際に考えたのが最後だよ!って方も多いと思います。
しかし、採用前と採用後とでは自己分析は全く異なるものです。
キャリアパスを考えるにあたっては、実際に業務を経験して勤務する自治体のことをある程度理解した状態で自己分析することが重要な意味を持ちます。
自分の業務適性を知る
実際に自己分析をしていくわけですが、まずは
自分の強みは何か、そしてその強みはどういう業務に活かせるのか?
これをしっかりと考えましょう!
これは逆に自分が苦手な分野についても同様に必要です。
やりたい仕事が必ずしも得意な仕事とは限りません。やりたい仕事が苦手な仕事である場合もあり得ます。
この先、強みをさらに伸ばす方向だけで進めるのか、弱みも克服する必要があるのか、これらはキャリアパスを考える上で重要な視点です。
やりたい仕事を考える
業務適性と少し似ていますが、自分が本当にやりたい仕事は何なのかをしっかりと考えましょう。
やりたい仕事を考える際には、仕事でどういうときにやりがいを感じるのか、何を得たいのかといったことをきちんと自分自身で考える必要があります。
「人気の部署だから観光関係の仕事をしたい」
「花形の部署だから財政課で働きたい」
このように「人がやりたいと思っている仕事」だから「その仕事がしたい」という考え方をする人がよくいます。
しかし、その仕事に対してあなた自身がやりがいを感じられそうにない場合や望むものが得られそうにない場合、その仕事はあなたにとってやりたい仕事とは言えないでしょう。
また、自分が得意な仕事をやりたい仕事だと思い込んでいるケースもあります。
しかし、必ずしもそうとは限りません。得意な仕事は達成感を得られやすく上司や周囲からも評価されやすいため、やりたい仕事と錯覚しがちです。
やりたい仕事はこれらの点に注意して考えましょう。
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③自分の将来像を考える
ここからが本格的にキャリアパスを考える段階と言えるかもしれません。
まずは自分の将来像を考えます。
「将来像」は「将来の目標」と言い換えても良いでしょう。その目標にたどり着くまでの過程・道筋がキャリアパスです。つまりキャリアパスには自身の将来像が必須というわけです。
ここまでで次の2つの項目を考えてきました。
①勤務先のことを知る、②自己分析をする
ですね。
これらを踏まえて自分の将来像を考えることになります。
このとき一つ大事なことがあります。
それは何かと言いますと、将来像は次の3点が明確になっている必要があるということです。
- その将来像はいつ時点のものか
- そのときの役職・肩書は何か
- そのときどういうスキルを身につけているのか
これらが明確になっていない将来像では正しくキャリアパスを描くことはできませんので、注意してください。
慣れていないと将来像を描くのが難しいと感じるかもしれません。
そんな人は、具体的に○歳(例:45歳など)の自分をイメージして考えると良いです。
○歳の自分はどういうスキルを持っているか?どういう経験をしているか?そのときの役職は何か?
これらをイメージして自分像を作りましょう。
出来上がった自分像が目標とは異なっていることもあると思います。
そんな場合はイメージした年齢を少し変えて改めて自分をイメージしてみましょう。
それでも目標と異なる場合は、また年齢を少し変えてイメージし直します。
地道な作業ですがこれを繰り返していけばいずれ目標と言える将来像が出来上がるはずです。
④自分の現在位置を明確にする
将来像が明確になったら次は「自分の現在位置」を明確にします。
これまで自分はどういう経験をしてきて、今現在どういうスキルを持っているか、自分には何ができて何ができないのか。
この辺りをしっかりと考えましょう。
自分の現在位置を見誤るとキャリアパスも誤ったものになってしまいます。
面倒だとは思いますが、きちんと自分自身に向き合うことが大事です。
⑤その将来像を実現するためのプロセスを明確にする
これで将来像と現在位置が明確になりました。
次はその将来像を実現するためのプロセスを明確にします。
といっても既に将来像と現在位置が明確になっています。
なので後は、その差分(足りないスキルや経験)を埋めるにはどういう部署でどういう経験を積めば良いかを考えるだけです。
「どういう部署でどういう経験を積めば良いか」という点を考えるにあたっては、先に挙げた「勤務先にどういう部署・仕事があるのかを理解する」が役に立つはずです。
これで将来像を実現するためのプロセスが明確になるはずですが、このプロセスこそがキャリアパスというわけです。
キャリアパスを考える際に注意したいポイント
キャリアパスの考え方を説明してきましたが、お話しできていないポイントが3点あります。
キャリアパスは現実的なものにする
理想的な内容だけのキャリアパスは一見良いものに感じます。しかしそれが実現困難なものであれば、そのキャリアパスにはほとんど意味がありません。
キャリアパスは目標を達成するまでの過程であり、言ってみれば計画です。達成可能でない計画は計画とは言えません。
通常より少し頑張って実現できる程度の難易度がキャリアパスには適当です。
キャリアパスはガチガチに固めすぎない
キャリアパスをガチガチに固めすぎると、そのとおりにならなかった際の軌道修正に労力を要します。
事務系公務員は異動が多く希望通りにいかないことも珍しくありません。キャリアパスの軌道修正が必要になる場面は多々あります。
軌道修正に多大な手間がかかるとかなりの負担になりますし、場合によっては面倒くさくなって軌道修正自体やめてしまいたくなるかもしれません。
ですから、複数のケースを想定したり幅を持たせたりする等、ある程度柔軟なキャリアパスにしておくことをオススメします。
キャリアパスは役所(組織)にとっても有益なものであるべき
キャリアパスを考えるとき、自分自身の利益ばかり求めていてはいけません。
キャリアパスは自分自身だけで完結するものではなく、当然勤め先である役所(組織)も関係します。例えばキャリアパスに大きく関係する人事異動は自分自身で決められるものではありません。役所(組織)が関与するものです。
役所(組織)にとって利益のないキャリアパスでは役所(組織)の理解を得難いため、結果としてキャリアパスの実現は困難になってしまいます。
先ほど言ったとおり、実現困難なキャリアパスにはほとんど意味がありません
ですから、キャリアパスは役所(組織)にとっても有益なものにするべきです。
先ほどの人事異動の例で言うと、役所(組織)の利益と合致するキャリアパスであれば希望する部署(当然キャリアパスにある部署)に異動できる可能性が上がります。
この辺りの「キャリアパスと異動希望との関係性」に関してはこちらの記事にまとめています。気になる方はお読みください。
>> 希望が通る異動希望調書とは?元県庁職員が教える正しい書き方
「役所(組織)にとっても有益なもの」というところがピンとこない方は、少し視点を考えてみることです。
この先の社会的な情勢の変化(例えば、高齢化や社会保障費の増大、その自治体でのイベントの開催等)を踏まえつつ、役所に求められるのはどういう人材(職員)かを考えてみましょう。そうすれば自ずと見えてくるはずです。
(最後に)キャリアパスは固執するものではない
事務系の地方公務員向けにキャリアパスの考え方について説明してきましたが、いかがだったでしょうか。
一人でも多くの方がこの考え方を取り入れてくだされば幸いです。
ここで最後に一つ、「キャリアパスは固執するものはない」ということについても伝えておきたいと思います。
折角キャリアパスを考えたからにはそのとおりにキャリアップしていきたいものです。しかし現実はそうはいきません。
特に公務員の人事異動では希望が通らないケースがほとんどだと思います。
希望が通らなかったときは難しく考えず気楽に軌道修正することが肝要です。
最初に描いたキャリアパスどおりにキャリアップできる人もいれば、何度も軌道修正することになる人もいます。
しかし、キャリアパスをきちんと描いていれば、どちらだとしても成長につながるのです。
キャリアパスがあるからこそ、自分が歩もうと考えている過程どおりに進んでいるのか、それともズレが生じているのかがわかるのです。そういう意味でキャリアパスが無駄になることはないと言えます。
キャリアパスは固執してそのとおりに進もうとするのではなく、自身の将来像に到達するための羅針盤のようなものと考えればよいと私は思います。