行政に関する知識集

生活保護の「他法優先」とは?(基本から説明)

生活保護制度に携わる方は「他法優先」を必ず理解する必要があります

生活保護ケースワーカーを経験した元公務員である僕が「他法優先」について基本から説明します

(基本)「補足性の原理」(生活保護法第4条)の理解

生活保護法の第4条には次のように書かれています。

第四条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。

2 民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。

3 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。

生活保護法(昭和25年法律第144号)より(一部抜粋)

この生活保護法第4条では国民が保護を受けるために守らないといけない要件が規定されています。

どういう要件かと言うと第1項に書かれているとおり、

生活保護は、受ける世帯の全員がその最低限度の生活の維持のために、利用できる資産や能力、そのほかのあらゆるものを活用することを前提とする

ということです。

続いて、第2項を見ていただきたいのですが、

“民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。”

と書かれていますね。

これは「補足性の原理」と呼ばれる生活保護の基本原理になります。

この「補足性の原理」によって他法他施策が生活保護に優先することになります

「他法優先」とは“他法・他施策が保護に優先する”ということ

先ほど、「補足性の原理」によって他法他施策が生活保護に優先する、と説明しました。

実はこれが、「他法他施策の優先」(いわゆる他法優先)と呼ばれる原則です。

簡単に説明するとこういうことです。

生活保護は原則として生活保護法以外のあらゆる制度を利用してもそれでも困窮する場合にしか受給することはできない

これは保護を開始するときの要件であることは当然として、受給中であっても併用できる制度がある場合は手続きを行う必要があります。

「他法優先」の一例

例えば、病気によって職を失い無収入になったAさん(単身者)が生活保護を受けるとします。

予め決められている基準によって、Aさん世帯(今回の例ではAさん一人の単身世帯)がひと月に要する最低生活費が計算されることになります。

この最低生活費を仮に11万5千円/月とします

このAさんは今収入が全くないので、そのままだと生活保護費として11万5千円が支給されることになります。

しかしここで、Aさんの病気が原因で障害年金2級(月65,000円)を受給できるようになったとします。

実はこの場合、他法優先によってAさんは生活保護費として11万5千円の満額を貰うことはできません

障害年金の6万5千円はAさんの収入として認定することになり、その結果、Aさんに支給される生活保護費は11万5千円から6万5千円を差し引いた5万円となります

※実際には障害者加算などもあって支給額は若干変わってくるのですが、分かりやすさを優先するため、かなり単純化して説明しています。

障害年金を貰えない場合 障害年金を貰える場合
生活保護費・・・11万5千円
<合計>11万5千円
障害年金・・・6万5千円
生活保護費・・・5万円
<合計>11万5千円

※表中の金額はあくまでも例であり実際の支給額は世帯の状況やそのときに基準等によって異なります

これを聞くと、どうせ障害年金を貰ってもその分生活保護費が減ってトータルの金額が変わらないなら障害年金なんて貰わない、とAさんは思うかもしれません。

AKASHI
AKASHI
僕が担当していたケースでも実際にそういう人はいました

しかし、ここで先ほどの「補足性の原理」が出てきます。

補足性の原理とは、

生活保護は、受ける世帯の全員がその最低限度の生活の維持のために、利用できる資産や能力、そのほかのあらゆるものを活用することを前提とする

というものでしたね。

生活保護法以外のあらゆる制度を利用してもそれでも困窮する場合にしか受給することはできないわけですから、生活保護を受けるためには、あらゆる制度を利用する、すなわちAさんの場合は障害年金を貰う必要があるというわけです。

あくまでも他法優先ということです。

(終わりに)利用できる他法・他施策がないか確認することが重要

他法優先という原則があるため、担当している生活保護受給者がほかに利用できる制度がないか確認することも生活保護ケースワーカーの大事な仕事の一つです。

つまり、生活保護ケースワーカーは常に他法優先を意識して業務にあたる必要があるというわけです。

このため、生活保護ケースワーカーは生活保護に優先する法律や施策(他法・他施策)を広く知っておく必要があります

とはいえ、ケースワーカー初心者が数多ある他法・他施策をいきなり全て覚えるのは困難です。

なので、まずは最低限覚えておくべき他法・対策から少しずつ覚えつつ、不足する知識は参考書を活用するのがオススメです。

僕のほうで「生活保護ケースワーカーが最低限知っておきたい他法他施策」をまとめましたので、参考にしてください。

生活保護ケースワーカーが知っておくべき他法他施策の一覧生活保護には「補足性の原理」と呼ばれる基本原理があり、これによって他法他施策が生活保護に優先します。いわゆる「他法優先」と呼ばれる原則です。 このため、生活保護ケースワーカーは生活保護に優先する法律や施策を知っておく必要があります。 本記事では「生活保護ケースワーカーが最低限知っておきたい他法他施策」をまとめてみました。...

また、僕がケースワーカー時代に活用していた他法・他施策の参考書をこちらの記事で紹介していますので、そちらも参考にしてください。

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AKASHI
AKASHI
関東在住の30代。某県庁で10年ほど勤務した元公務員です。 財政課、市町村課、生活保護ケースワーカー、個人情報保護担当部署を経験。 詳細プロフィールはコチラ