チームワークや難しい折衝が必要とされる攻めの仕事を成功させるには、必ず高度なコミュニケーションスキルが求められます。
それは公務員であっても一緒です。
中でも「傾聴」と「アサーション」は特に重要で、公務員として周りより優れた成果を出し上司や同僚からも信頼されるためにはほぼ必須と言えるでしょう。
以下、詳しく解説していきます。
なお、本記事における「公務員」とは特に説明のない限り「事務系(行政)の地方公務員」を指しています。
「傾聴」と「アサーション」について
仕事ができて信頼されている公務員は「傾聴」と「アサーション」を実践している
私は公務員(県職員)として働く中で沢山の公務員を見てきました。それは県職員の同僚や上司だけではなく、市町村や他県といった他自治体の職員や国家公務員も含まれます。
私は大手民間企業で数年勤務したのち地方公務員(県職員)になったわけですが、そのおかげで常に「民間企業ではどうだろうか?」という観点で公務員を見てきました。
そうした中で気づいたことは沢山あるのですが、その中の一つに以下のようなものがあります。
それは、民間企業の社員と比べて公務員は「深いコミュニケーション」が下手な職員が多いというものです。
逆の見方をすると、「深いコミュニケーション」が上手な職員は仕事ができる上に周囲からも信頼されて目立つ存在でした。
自分のことを言うのも変ですが、私もそのような職員だったと思います。
「深いコミュニケーション」という用語がどう解釈したらいいかわからないかもしれませんね。少し説明します。
ここでは、“当たり障りのない表面上のコミュニケーションではなく、自分の意見も相手の意見も同等に扱われる意味のあるコミュニケーション”を指しています。
ではなぜ「深いコミュニケーション」が上手な職員は具体的にどういう人なのでしょうか。
私なりに考えてみた結果、彼らにはある共通点があることに気がつきました。それは、
社会人にとって重要なスキルである「傾聴」と「アサーション」が当たり前に出来ている
という共通点です。
大半の公務員が「傾聴」と「アサーション」が出来ていない中で、彼らはそれらを当たり前のように実践しているのです。
では「傾聴」とは何か?「アサーション」とは何か?
その辺りも含めもっと掘り下げていきたいと思います。
「傾聴」とは何か?
「傾聴」とは相手の言いたいことにしっかりと耳を傾け、それをきちんと受け止めることです。
これを具体的な行動に近づけて説明すると、相手の話に共感を示しながら真摯に聴くことと言えます。
例えば、相槌を打ったり相手の発言にオウム返しをしたりして、相手の発言に共感していることを示すことで関係を良好にしていきます。
傾聴をすることで相手は話しやすいと感じてもっと話をしてくれますし、聴き手は深いレベルで相手の発言を理解することができます。
傾聴は円滑なコミュニケーションを図るために大事なコミュニケーションの方法です。
「アサーション」とは何か?
「アサーション」とは自分も相手もどちらも尊重しながら自己表現をすることです。
自分も相手も尊重するわけですから、
相手に対して一方的に意見を押し付けるのではなく、相手のことを尊重しながら自分の意見や要求をきちんと伝える(自己主張する)
ということになりますね。
例えば、相手の意見に対して反論したいときにバッサリと否定してしまったとします。そのとき相手はどう思うでしょうか?たとえそれが事実だったとしても良い気がしないでしょう。それだけでなく、今後、自分の意見を言ってくれないようになる恐れすらあります。
アサーションでは、相手が意見を出してくれたことを尊重しながら自分の意見をしっかり表明します。そうすることで、こちらは自分の意見をしっかり表明できるし、相手も次の意見が出せるようになり、コミュニケーションがどんどん深くなっていくというわけですね。
このように傾聴と同様アサーションも円滑なコミュニケーションを図るために大変重要な考え方です。
公務員における「傾聴」と「アサーション」の必要性
公務員の仕事の大半が傾聴なしでも出来てしまう
基本的に公務員は人の話をしっかり聞かない人が多いです。
なぜなら公務員の仕事の基本は文書のやり取りだからです。
さらに言うなら、仕事の大半は過去の処理方法に倣って処理することになるうえ、チームではなく個人で仕事することが多いので、人と議論するということがあまりないからでしょう。
また、住民を相手にする仕事であっても一人の相手にそんなに時間を割けないので、どうしても自分のペースで話を進めてしまいます。
公務員の仕事のすべてがそうだとは言うつもりはありません。
しかし、多くが上記のようなやり方で支障なく出来てしまうので、必然的に人の話を聴かない職員が多くなってしまっていると私は思います。
そもそも人の話を聴かないわけですから、当然ながら傾聴なんてしていないということです。
公務員の大半はアサーションなんて出来るはずがない
先ほど私はこのように言いました。
“公務員の多くは人の話をしっかりと聞かなくても支障のない仕事をしている”
少し考えてみてください。
人の話を聴かない人がアサーションなんて出来るでしょうか?。
相手の意見をきちんと聴かない人が相手のことを尊重できるはずないですよね。
つまり、
公務員の大半はアサーションなんて出来るはずがない
という状況だということです。
したがって、先の傾聴のことも踏まえると、
多くの公務員は傾聴もアサーションもなく日々仕事をこなしており、それでも仕事は回っている
というのが現状です。
攻めの仕事で結果を出したいなら「傾聴」と「アサーション」が必要
傾聴もアサーションも活用しなくても支障なく仕事ができるのなら、別にそれでいいじゃないかと思われるかもしれません。
確かに、ただ単に与えられた仕事をそれなりにこなすだけでよいのならそうかもしれません。
しかし、いわゆる「ルーティンワークじゃない仕事」(=「攻めの仕事」)で成果を出すためには、「傾聴」と「アサーション」は必須です。
「ルーティンワークじゃない仕事」というと、住民からのクレーム対応、他の自治体と連携しての仕事、これまでにない先進的な事業といった仕事が挙げられますね。
そのような仕事では相手の意見を踏まえつつこちらもきちんと意見を出していく必要があります。また、チーム内での深いコミュニケーションも求められます。そういう場面で仕事を円滑に進めるには「傾聴」と「アサーション」は必須です。
「傾聴」と「アサーション」は絶対に身につけるべきもの
公務員の新人研修では「傾聴」や「アサーション」の研修は行われないケースが多い
民間企業、特に大手では新人研修で「傾聴」と「アサーション」の研修が行われることが多いです。一方で公務員の新人研修ではあまり行われていないようです。
公務員の新人研修でも比較的「傾聴」の研修のほうはまだ実施されているようですが、「アサーション」の研修については実施している自治体をこれまで耳にしたことがありません。
私自身の話をすると、民間企業に就職した際の新人研修では「傾聴」と「アサーション」どちらの研修もみっちりありました。しかし、公務員になったときに受けた新人研修ではどちらの研修もありませんでした。
また、少し見方を変えた話をすれば、民間企業では「傾聴」や「アサーション」の研修を受けていなくてもOJT的に身につける機会が多いように思います。
それは、お客さんとのやり取りや会議・ミーティングでの上司や先輩の発言・行動、そういうところで学ぶことができるからでしょう。
このように民間企業と公務員では「傾聴」と「アサーション」を学ぶ機会にかなり差があります。
ですから民間企業での経験が全くない公務員の方ですと、当然に「傾聴」と「アサーション」ができていない職員が多くなってしまうわけです。
「傾聴」と「アサーション」ができていないならとにかく学ぼう
「傾聴」と「アサーション」を実践できるようになると、驚くほど円滑にコミュニケーションが行えるようになります。
普段の仕事でも打ち合わせや接客がよりスムーズに進むようになりますし、上司への意見もしやすくなると思います。そうなると多方面から今度は「信頼」が得られるようになりますし、上司からの評価も良いものになるはずです。
中には自然と「傾聴」や「アサーション」を実践できている方もいます。
しかしながら、そうじゃない方のほうが断然多いです。
「傾聴」や「アサーション」ができていないと感じる方は絶対に学ぶべきです
学び方については書籍を買って読むのが一番手軽だと思います。
外部の研修等を利用するのも当然ありです。
お金を多少かかるかもしれませんが、それだけの価値はあると断言できます。
現職だけでなく公務員を目指している方も学ぶ価値がある
また、現職公務員だけでなく、これから公務員になりたいと思っている方も「傾聴」と「アサーション」を学ぶことをおススメします。
理由は単純。メリットばかりだからです。
将来公務員になってから活かせるのは当然として、公務員試験の集団討論(グループディスカッション)でも役に立ちますし、最悪、公務員になれなかった場合にも絶対に無駄にはなりません。
おわりに
私自身、公務員として仕事をしていたときに本当に役に立ったスキルがこの「傾聴」と「アサーション」でした。
しかしながら、同僚や他自治体の職員でも「傾聴」や「アサーション」を知らない方ばかりでとても勿体無いなと思っていました。
ぜひ多くの公務員の方に「傾聴」と「アサーション」を知ってほしいと思い、この記事を書いた次第です。
一人でも多くの方がこれらを身につけて公務員全体がスキルアップすることを元公務員として願っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。