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地方自治体の個人情報保護って何に規定されてる?重要なのは法律よりも条例!

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地方自治体における個人情報保護は何に規定されているかご存知ですか?

地方公務員の方でも「個人情報保護だと思っている人が一定数いますが、実はその回答では不正解です。

正確には、地方公共団体の個人情報保護は、その団体が定める「個人情報保護条例の対象となります。

そのため、地方公務員が個人情報保護をきちんと理解しようと思うと、自団体の個人情報保護条例を学ばなければなりません

この点について以下詳しく説明します。

自治体の個人情報保護は「個人情報保護条例」が基本である

一般的に個人情報保護というと「個人情報の保護に関する法律」いわゆる個人情報保護法をイメージする方が多いと思います。

実は、地方公務員が仕事をする上では、個人情報保護法よりもその自治体が定める「個人情報保護条例」のほうが重要になります。

なぜなら、個人情報保護法が対象にしているのは民間事業者であり、地方自治体を対象にしているのは個人情報保護条例だからです。

言っている意味がよくわからないという方もいるかと思います。個人情報保護に関する法体系は結構複雑でわかりづらいので、その気持ちはわかります。

わかりやすいように図を使って説明してみたいと思います。

このように、個人情報保護法は土台にあるのみで、地方公共団体を対象にしているのはあくまでも個人情報保護条例だというわけです。

AKASHI
AKASHI
ちなみに国の行政機関、例えば厚生労働省などを対象にしている法律は「行政機関個人情報保護法」です。「行個法」と省略しますので覚えておくと良いですよ。

驚くことに、地方公務員の職員でもこのことを知っていない人が意外といます。もし、これをお読みの地方公務員の方の中にも「知らなかった…」という人がいらっしゃいましたら、必ず覚えてくださいね。

さて、この個人情報保護条例ですが、「条例」なわけですから当然、自治体ごとに存在します

東京都なら東京都の個人情報保護条例がありますし、日本一小さい自治体である舟橋村にも個人情報保護条例はあります。

自治体ごとに存在するわけですから、条例の中身も自治体によって異なります。

ですので、地方公務員が個人情報保護を正確に理解ためには、自分の自治体の個人情報保護条例(それに付随する規則等を含む。)を理解する必要があります

  • 地方自治体の個人情報保護は団体ごとに存在する個人情報保護条例に従う
  • 地方公務員が個人情報保護を正確に理解するためには、自団体の個人情報保護条例およびそれに付随する規則等を理解する必要がある

自治体ごとに条例は異なるが基本的な部分は共通している

先ほども言いましたが、個人情報保護条例は自治体ごとに異なります

しかしながら、自治体ごとに全然違う内容かというとそういうわけでもありません。行政機関個人情報保護法を参考にしている部分やそれ以外でも自治体間で同じ趣旨の規定が多いです。

したがって、基本的な部分は共通していると考えて問題ありません

例えば、埼玉県の条例と船橋村の条例における個人情報の定義を見てみましょう。

埼玉県の条例における個人情報の定義

第2条 略
2 この条例において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録(電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することはできない方式をいう。)で作られる記録をいう。第6条第2項、第25条第1項及び第68条において同じ。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。以下同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)
二 個人識別符号が含まれるもの

埼玉県個人情報保護条例(平成16年12月21日埼玉県条例第65号)より(一部抜粋)

北海道の条例における個人情報の定義

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 個人情報 個人に関する情報であって、次のいずれかに該当するものをいう。
ア 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録(電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式をいう。次号イにおいて同じ。)で作られる記録をいう。以下同じ。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。第3号の2において同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)
イ 個人識別符号が含まれるもの

北海道個人情報保護条例(平成6年3月31日北海道条例第2号)より(一部抜粋)

両者の規定がほぼ同じことがわかると思います。上の引用文は「個人情報」の定義部分を一部抜粋したものが、このほかも似たような規定になっています。

気になる方は他の団体の個人情報保護条例も見てみてください。書き方は違っても同じような規定になっていることがわかると思います。

  • 個人情報保護条例は自治体ごとに異なるが、全然違う内容かというとそういうわけでもない
  • 行政機関個人情報保護法を参考にしている部分やそれ以外でも自治体間で同じ趣旨の規定が多い
  • つまりは、基本的な部分は共通していると考えて問題ない



基本的な部分は一緒でも細かい部分では異なることもある

基本的な部分が共通しているとはいえ、条例ですから細かい部分では異なることがどうしてもあります。

そのため、詳細は自治体の条例を正しく理解する必要があります

例えば、行政機関個人情報保護法のように、個人情報の定義として条例上、死者の情報を含まない自治体もあれば、宮城県のように死者の情報も含む団体も存在します。

(定義)
第2条 この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。
(1)個人情報 個人に関する情報であって,次のいずれかに該当するものをいう。
 イ 略
 ロ 略

個人情報保護条例(平成8年宮城県条例第27号)-宮城県ホームページより引用

【解釈】
1 第1号「個人情報」
(1)本号は,条例の対象となる個人情報の範囲を定めたものであり,生存者に限らず死者も対象とするものである。

個人情報保護条例の解釈及び運用基準-宮城県ホームページより引用

このように宮城県の個人情報の定義は、条例でも「生存する個人に関する情報であって」ではなく「個人に関する情報であって」となっています。また、解釈及び運用基準でも明確に「生存者に限らず死者も対象とする」とされています

これは宮城県に限らずほかの自治体でも見られます。

ですので、これをお読みの方も自分の自治体では死者の情報を含むのかどうかという点については、自団体の条例をしっかり確認する必要があるということです。

そして、この死者の情報は一例でしかありません。ほかにも自治体特有の規定がないか確認しておく必要があります

自団体の個人情報保護条例を学ぶにはどうすればいいのか?

個人情報保護条例は自治体の数だけありそれぞれ異なるため、詳細部分を一般的な書籍等で学ぶのはなかなか困難です。

そのため、多くの自治体では、その理解の助けとなるドキュメントが用意されています。手引きや運用マニュアル、逐条解説などが代表的な例です。

ちなみに逐条解説とは、条文一つ一つについて、その意義や要件等を解説したものです。

先ほど引用した宮城県の「個人情報保護条例の解釈及び運用基準」もその一例です。

ほかにも例えば東京都の場合はどうでしょうか。ホームページを見てみると「個人情報保護の手引」というものがありますね。

個人情報保護の手引(抄)-東京都ホームページ
http://www.johokokai.metro.tokyo.jp/kojinjoho/gaiyo/tebiki/index.html

手引きや逐条解説以外にも、ほぼすべての自治体で、個人情報保護に関する職員向けの研修が実施されているはずです。私が勤務していた県庁でも毎年、研修が実施されていました。新規採用職員向けや係長向け、実際に個人情報を扱う職員向け、という感じでいくつかの種類に分かれていましたね。

これまで研修を受けたことのない方は一度受講しておくことを強くオススメします。

  • 条例の正しい運用のために、手引きや運用マニュアル、逐条解説などを自治体が用意しているケースが多い
  • 職員向けの研修が実施されている自治体も多い(一度受講したほうがよい)



まとめ

地方公務員にとっては「個人情報保護条例」が重要であるということを理解いただけたかと思います。

各団体の条例や行政機関個人情報保護法に共通する部分をベースに、自分の自治体ではどうなっているかという考え方で理解していくほうが分かりやすいと個人的には思います。

繰り返しになりますが、地方公務員の方は一度しっかりと個人情報保護について学んでおくべきだと思います

というのも、今時点において個人情報を扱う業務をしていなくても、いつその業務に携わることになるかわからないからです。急な異動や配置替えで業務が変わるかもしれませんし、新規事業で個人情報を扱うことになるかもしれません。

個人情報保護は公務員の基本です。
この記事を読んで個人情報保護条例が重要であることを理解したのが第一ステップだとして、それだけで満足することなく、この機会にしっかりと身につけておくべきでしょう。

他にも個人情報保護に関する記事を書いています。こちらにまとめていますので興味のある方はどうぞ。

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頑張る公務員の味方! 関東在住の30代。某県庁で10年ほど勤務した元公務員です。 財政課、市町村課、生活保護ケースワーカー、個人情報保護担当部署を経験。 詳細プロフィールはコチラ